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2017/03/10

ソフトウェアとリバースエンジニアリングと法律

  law 
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ソフトウェアの使用許諾契約書(EULA: End User License Agreement)にはリバースエンジニアリング(例えば逆アセンブルや逆コンパイルなど)禁止条項がついていることが一般的です。このリバースエンジニアリングの法律的な部分についていろいろしらべてみたら一筋縄ではいかない問題だったのでメモ。

まず、ソフトウェアのリバースエンジニアリングについては公正取引委員会のソフトウェアと独占禁止法に関する研究会で平成14年ごろに議論されたようで、競争政策上の観点からリバースエンジニアリング禁止条項を無制限に認めることはないという結論に至ったようです。

公正取引委員会, "ソフトウェアライセンス契約等に関する独占禁止法上の考え方 ―ソフトウェアと独占禁止法に関する研究会中間報告書―," pp.28-29, 平成14年3月20日.

当該ソフトウェアとインターオペラビリティを持つソフトウェアやハードウェアを開発するためには,
 ① 当該ソフトウェアのインターフェース情報が必要であり,
 ② ライセンサーが当該インターフェース情報を提供しておらず,
 ③ ライセンシーにとって,リバースエンジニアリングを行うことが,
当該ソフトウェア向けにソフトウェアやハードウェアを開発するために必要不可欠な手段となっているような場合においては,リバースエンジニアリングを禁止することは,ソフトウェアにノウハウが含まれる場合があり,また,仮に外形上又は形式的には著作権法上の権利の行使とみられる行為であるとしても,著作権法上の権利の行使と認められる行為とは評価されず,独占禁止法が適用されるものと考えられる。

ちなみにこの場合に適用される独占禁止法の条文については、不公正な取引方法の一般指定第12項「拘束条件付取引」となるようです。

不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号):公正取引委員会

(拘束条件付取引)
12 法第二条第九項第四号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。

また、もう少し新しめの資料としては平成19年に出された「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(最終改正は平成28年1月21日)があり、研究開発を制限するような行為は著作権の行使とは認められないと述べられています。

公正取引委員会, "知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針," p.23, 平成19年9月28日 (改正 平成22年1月1日, 平成28年1月21日).

(7) 研究開発活動の制限

ライセンサーがライセンシーに対し,ライセンス技術又はその競争技術に関し,ライセンシーが自ら又は第三者と共同して研究開発を行うことを禁止するなど,ライセンシーの自由な研究開発活動を制限する行為は,一般に研究開発をめぐる競争への影響を通じて将来の技術市場又は製品市場における競争を減殺するおそれがあり,公正競争阻害性を有する [注18]。したがって,このような制限は原則として不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。

注18 プログラム著作物については,当該プログラムの改変を禁止することは,一般的に著作権法上の権利の行使とみられる行為である。しかしながら,著作権法上も,ライセンシーが当該ソフトウェアを効果的に利用するために行う改変は認められており(著作権法第20条第2項第3号,第47条の2),このような行為まで制限することは権利の行使とは認められない。

ちなみに上記の資料で出てくる著作権法第二十条第2項三号、第四十七条の二(現在は三)は以下のようになっていることが分かりました。
ソフトウェアは同一性保持権や複製において他の著作物とは違う扱いを受けていることが分かります。

著作権法

(同一性保持権)
第二十条  著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
2  前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
・・・・・
三  特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変
・・・・・

著作権法

(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等)
第四十七条の三  プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物の使用につき、第百十三条第二項の規定が適用される場合は、この限りでない。

公取が実際に排除措置命令を出したり、裁判による判例等はまだないようなので解釈については釈然としない部分も残っていますが、それだけ難しい問題なんでしょうね。


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