BLOGTIMES
2012/01/30

「virtual」と「仮想」の狭間

  english  言葉 
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ishinao@tumblrでみつけた「virtual」を「仮想」と訳したエピソードが面白かったのでメモ。
対訳がカッチリと固まってしまっている単語は辞書を引かないので、こういうのはとても刺激になります。

「言葉のインフレ」は経済のそれよりはるかに恐ろしい:日経ビジネスオンライン

今号は「仮想化」について特集しています。「仮想」と聞くと、かなり前のことですが、日本IBMでシステムズエンジニアをしていた方が「virtualを仮想と誤訳した責任は我々にあります」と反省の弁を述べたことを思い出します。米IBMがvirtual memoryを発表した時、日本IBMが仮想記憶と翻訳しました。virtualの意味は「事実上の」「実質的」ですから、virtual memoryとは「本来のメモリーではないが事実上メモリーとして使える技術」を指します。ところが、仮想記憶と訳したため、実体がない想像上のメモリーという印象を与えてしまい、しかもコンピュータの世界でvirtualが出て来ると必ず仮想と訳されるようになりました。同氏は「もっといい訳にしておけば」と悔やむ所以です。とはいえ今考えてみても、しっくり来る言葉はなかなか見つかりません。言葉の難しさを感じます。

興味深くて思わず辞書を引いてしまいましたが、きちんと確認してみるとどうやら virtual は real の単純な対義語ではないのですね。

American Heritage Dictionary Entry: virtual

vir·tu·al
1. Existing or resulting in essence or effect though not in actual fact, form, or name: the virtual extinction of the buffalo.
2. Existing in the mind, especially as a product of the imagination. Used in literary criticism of a text.
3. Computers Created, simulated, or carried on by means of a computer or computer network: virtual conversations in a chatroom.

3はもうコンピューターに限定されているので除くとして、ポイントは1の意味なんでしょうね。僕の貧弱な英語力だとアレですが、同じような概念を表す単語といえば pseudo, imaginary, fake, imitation あたりが思い浮かびます。pseudo は疑似だから、見かけや振る舞いは似ていても、それを生み出す本質的な部分は異なっている存在。imaginary は想像上だから、現実に存在しえないけど説明するためにあると都合の良いような存在。それに対して virtual は実体がないことよりも、本物と同じ効果をもたらすことが強調されている言葉なんですね。

あくまで帰納推論的な理解ですが、確かに VM とか、仮想86モード (virtual 8086 mode) とかはそこに実際に存在するしないの問題ではなくて、同じ効果を持つことが重要なわけですからね。
なかなか奥が深いです。


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